読めない、書けない…そんなときは語彙をしっかりと!

「先生、うちの子、国語力というか読解力が弱いと思うんですよね。算数のテストでも文章になると、これ、数字てきとうに計算しただけなのでは? ってのがよくあるんです」

という相談を受けます。

テストを見せてもらって、その問題を解くのに必要な力ごとに分類、どんなことを書いているのかを見てみると…うん、読んでいないのでしょうね(笑)

国語力や読解力が、社会に出てから必要なのはもちろんですが、

勉強面においても、センター試験が今回で最後になり、新しく始まる大学共通テストで国語と数学の記述式問題が導入されるなど、読解力や記述力、

「相手が書いている、いっていることを正確に理解する」力、

「それに対する適切な答えや自分の考えを相手に伝わるように書く、話す」力はますます必要になっていっているのを感じます。

おもしろいのが、国語力は、日本でよく長時間労働などの問題の際、取り上げられることも多い仕事の「生産性」にもつながっているかもしれないということ。

無印良品のアートディレクションをしているデザイナーの原研哉さんと、工業デザイナーの阿部雅世さんの対談本『なぜデザインなのか。』のなかに、ある企業の工場で働いている人たちの仕事の能率があまりに悪く、試しに国語のテストをしてみたら、とてつもなく成績が悪かったという話があります。

そこで、国語教育を始めると、俄然、仕事の能率がよくなったのだそう。勉強だけでなく、仕事にもつながるとなれば、これは鍛えないわけにはいきません。

教室でも、全然読めなかったり書けなかったのに、しっかり内容を理解し、記述問題でも半分以上は書けるようになった子がいますが、その子たちがどうやって読めるよう、書けるようになったのか。

そこで大きな役割を果たしたのが「語彙力」。まず、語彙力をつけることをしていきました。

国語の説明文や論説文を読むためには、難しい言葉を知らなくては意味を理解できませんし、物語文を読んでも、出てくる名詞や動詞を知らなければ何が起こっているのか理解できません。感情語を知らなくては登場人物がどんな気持ちになっているのかがわかりません。

シカゴ大学の教授であったM.J.アドラーによると読書の第一レベルは「単語の識別」だそう。単語がわからないと「その文は何を述べているか」がわかりません。

ですので、ホップ、ステップ期、年齢でいうと10代の始めまでにたくさんの単語を知っているといいですね。

以前、物語文を読んでいるときに「何が起こっているのかわからない」という子がいました。質問していくと、読めるけど、それが何を表しているのかがわからないので、状況も、気持ちもわからなかったよう。

「こういう状況で、こんなことが起こったんだよ」ということを説明してあげると、「あ〜そういうことか!おもしろい!」と、いままでつまらないと思っていた物語のおもしろさがわかったと言っていました。

音読が苦手という子がいると眼球運動に何か問題があるのでは? と思ってしまいますが、研究によると、「読む単語が難しいから注意がそれてしまう」ということが多いことがわかっています。大人でも、知らない単語だらけの英文を見たら、読む気が無くなってしまいますよね。

RAKUTOでいうステップクラスの子たち、中学年以降の子たちは、漢字や言葉に意識的にふれる機会を設けていますし、お家でも、「意識的に」言葉を増やすトレーニング、「語彙トレ」をするようにおすすめしています。

絵本、漫画など、何でもいいので、まずは単語にふれていってくださいね。

絵と文字がペアになっているものだとイメージしやすくていいですね。漢字も「下村式」など、元となった絵などのイメージが書かれているものだと覚えやすくていいです。

読み書きの基本となる「漢字」の覚え方に関しては、2018年に中国で行われた研究により「視覚」と「聴覚」を使うことで、もっとも良く、短い時間で覚えられるという結果が出ました。

「その漢字がどんな風にできたかを見て、音読しながら、形を見て書く」というのがいいので、下村式の「となえておぼえる」「となえてかく」シリーズなど、よくできているのでおすすめです。 

「好き」とつなげるのも有効です。

ある男の子は「歴史」が好きで漢字を覚え、ある男の子はゲームが大好きで、ゲームの攻略本を読むために漢字を覚えていきました。

趣味は「長期記憶」なので、覚えられるし、知りたいという積極性も生まれます。この時期は好きや趣味を通して言葉を増やしていってくださいね。

教育者の齋藤孝さんは『語彙力こそが教養である』の中で、語彙について、

「より多くの語彙を身につけることは手持ちの絵の具が増えるようなもの」、

「語彙が豊かになれば、見える世界が変わる」

とおっしゃっています。

大量のインプットで語彙が豊富になり、みんなの世界がどんどん彩り豊かになりますように。(にいどめ)